PowerBook2400c/180(1)

1997年発売のサブノートMacintosh

Macintoshのサブノート機、PowerBook2400c/180です。スペックは以下のような感じで、当時のMacintoshデスクトップ機と比較した場合、あまりパワフルとは言えないサブノートらしいスペックでした。

<Spec>
CPU : PowerPC603e 180MHz (後にPowerPC 750(G3) 240MHzへ換装)
Memoy : 16MB (64MB増設し80MB)
HDD : 1.3GB(IDE 2.5inch)
Display : 10.4inch TFT 800x600 65536色
OS : Mac OS 7.6

サブノート機でしたが、自分自身は他のMacは所有しておらず、このマシンをメイン機として利用していました。

サブノート機らしい小さなキートップのキーボード。トラックパッドの髭ボタンが懐かしい。

サブノート機ということでフットプリントは小さいですが、その厚みは今のノートPCと比較すると笑ってしまうぐらいの分厚さです。

今となってはとても分厚い。
PowerBook2400c/180(左側)とMacBook Air M2(右側)の厚さ比較。約27年で人類はここまで来たのかと感じる差が存在する。

X68000からのステップアップ機として購入かつ、初めて購入したMacintoshだったため、何もかもが新鮮でした。知人宅や店頭などでほんのちょっと触れたことがあるレベルでMacintoshに挑んでしまったので、導入後しばらくは悪戦苦闘の日々を過ごすことになってしまいます。

付属のOSはMac OS 7.6。

PowerBook2400c/180の付属OSはMac OS 7.6。最終的にはMac OS 9.1まで対応しています。当時、PowerBook2400c/180のスペック的にはMac OS 8.6がベストマッチと言われていましたし、実際自分自身もそう思うのですが、新し物好きが故、最終対応OSのMac OS 9.1を導入して使用していました。

Mac OS 9.1。内蔵メモリ80MB。仮想メモリを+1MBで設定しているのが懐かしい感じ。

Human68kやMS-DOSなどと違い、Mac OSはGUIのみでコマンドプロンプトなんてものは存在せず、CONFIG.SYSなどというものも書き換える必要がないのは画期的でした。意味づけされたシステムフォルダ内の各フォルダに機能拡張と呼ばれるファイル群をドラッグ&ドロップで配置することで機能を制御することができ、コマンドを打つ必要もCONFIG.SYSの内容を吟味する必要もないと言うのは驚きでした。

システムフォルダのフォルダ分けで機能を管理。

とはいえ、先に読み込まないといけない機能拡張があるとか、同時に使うとクラッシュする機能拡張があるとかといった問題はMacintoshと言えど変わらなかったです。機能拡張の読み込みの順序性を担保するためにファイル名を変更するという荒技もありました。

色々な違いがありますが、UIで一番慣れなかったのはマルチウィンドウの挙動です。

一見すると普通のマルチウィンドウ。

MacintoshのOSは一見するとごくありきたりなマルチウィンドウのGUIに見えますが、SX-WINDOWやWindowsとは少し違ったMacintosh特有の独特な動きを見せてくれます。

前面にSimpeTextのウィンドウが2つ、背面にFinderのウィンドウが2つ。

このように2つのアプリのウィンドウが2枚ずつ開かれている状態にして、背面に隠れているFinderのウィンドウを1つだけ前面に出したいと思ってもFinderのウィンドウが2つとも前面に表示されてしまいます。

SimpleTextのウィンドウの下に隠れているFinderのウィンドウ1つを前面に出そうとすると…

Finderのウィンドウが2つとも前面に出てきてしまう。


Macintoshを使い始めた当初はこのGUIになかなか馴染めなかったです。マルチウィンドウに見えて、実はアプリ毎のマルチレイヤーな動きになるのがなかなかしっくりきませんでした。OSのバージョンアップに従って拡張され続けた結果を段階的に受け入れてきた古のMac使いたちにはあまり違和感がなかったのだろうと思いますが、SX-WINDOWやWindows95からマルチウィンドウシステムに触れた身としては慣れるまで理解し難い挙動に苦しんだ思い出があります。

次第にMacintoshのお行儀を受け入れて違和感を感じることは少なくなりましたが、OSがMac OS Xに変わった時にこの挙動は引き継がれず普通のマルチウィンドウなGUIになっていて、Appleも特にこだわりがあってこのUIにしていた訳ではなかったことを改めて感じました。脈々と互換性を保ちながら拡張し続けたOSの限界だったのでしょう。本来Mac OS 8になる予定だった開発コード名Coplandの開発が遅れに遅れて開発中止に追い込まれてしまった理由を垣間見るような気分です。

続きましてハードウェアの特徴をご紹介。このPowerBook2400c/180は各所のギミックが凝っており、PCカードはイジェクトボタンを押下することでオートイジェクトされました。

PCカードのイジェクトボタン。左側のボタンが上段のPCカード、右側のボタンが下段のPCカードに対応。
このPCカードスロットに入れたPCカードがオートイジェクトされる。ちなみに右側の小さな穴は強制イジェクト用の穴、上方の黒いカバーはIRポート。

外付けFDDは本体のデザインに合わせた流線型ボディ。こちらもオートイジェクトに対応しており、OS上でFD取り出しを行うとFDが排出されるという機能がありました。

流線型な外付けFDDには謎に流線型なフタがついている。
フタを開くとフタ裏面にもアップルマークが隠れている。右上の小さな穴は強制イジェクト用の穴。
フタはそのままスタンドになる。傾斜がついてFDの抜き差しがしやすいという狙いだろうか。

この時代でもすでにOSはCD-ROMで提供されていましたので、このギミック満載の外付けFDDはほとんど使用しませんでした。裏面のゴム足が溶けてしまった以外は綺麗な状態をキープしています。

PCカードとFDのオートイジェクトギミックは、X68000のFDDのオートイジェクト機構通じるところがありとても気に入っていました。ただしX68000のように強制イジェクトまで機械的に実施する機能は無く、小さな穴に針金状のものを強く差し込んで押し出すという物理手段になっていたのは少し減点ポイント。X68000初代の背面にある強制イジェクトボタンはなんとなく心くすぐられる存在でした。現在はもうオートイジェクト機構などほとんど見ることがなくなり寂しい限りです。

拡張性は無さそうで最低限のポートはきっちり用意されていました。小さいボディながら背面にVGA、SCSI、PCカードスロット(x2)、ADB、シリアルの各種ポートが用意されており、これだけあれば十分と言えるだけの拡張性は確保されていました。

左からADB、電源、シリアル、FDD、VGA、SCSI、PCカードスロットx2。さすがに今や過去のものとなった規格ばかり。

側面左側にはマイクとヘッドホン端子もついています。

左側側面のヘッドホン端子とマイク端子。

今回、久しぶりに押入れから出してきたところ、液晶画面がビネガーシンドロームを患ってしまいかなり残念な状態になっていました。画面の爛れたような傷と共に酸っぱい酢酸のような香りがほんのりと漂ってきます。押入れなどに保管すると発症しやすいらしいので古いノートPCをお持ちの方は定期的に新鮮な空気に晒しておいた方が良いようです。

ビネガーシンドロームの傷跡が痛々しい液晶画面。

そして電源を入れても起動音はすれど、ディスプレイのバックライトが点灯せず。HDDもカッコンカッコンと怪しげた音を立てています。それでもなんとかOSが起動し、バックライトがつかないながらもうっすらと液晶画面に垣間見えるMac OSの文字。

バックライトが点灯せず、うっすらとユーザー選択画面が見える。

気が付けばPowerBook2400cも27年以上前のハードウェア(2024年現在)。ガタがきていても当然ということを改めて感じました。

もう処分してしまおうかとも考えましたが、初めて購入したMacintoshという思い入れもあり残しておいたものなので、現代の技術で復活できないか模索してみることにしました。

次回に続く。